はじめに
「寝たきりにならないためには、どうすればいいのだろう?」
高齢になると、このような不安を感じる方やご家族も多いのではないでしょうか。
理学療法士として15年以上、高齢者のリハビリに携わってきた経験から感じるのは、寝たきりは突然起こるものではなく、少しずつ活動量が減ることで進行していくケースが多いということです。
また、寝たきりになると筋力だけでなく、心臓や肺の働き、認知機能、生活の質まで低下してしまいます。
この記事では、寝たきり予防の重要性と、リハビリ職の視点から考える予防のポイントについて解説します。
寝たきりになる原因とは?
寝たきりの原因として、
- 脳卒中
- 骨折
- 認知症
- 心疾患や呼吸器疾患
などが挙げられます。
しかし、実際の現場では病気そのものだけでなく、「動かなくなったこと」が寝たきりにつながるケースを多く経験します。
例えば、入院後にベッドで過ごす時間が増えたり、転倒を恐れて外出しなくなったりすることで、身体機能は少しずつ低下していきます。
このように、活動量の低下によって身体機能が衰える状態を「廃用症候群」と呼びます。
人の身体は使わなければ衰えます。
だからこそ、寝たきり予防には日常生活の中で身体を動かし続けることが大切なのです。
寝たきりになると起こる6つのデメリット
① 筋力が低下する
寝たきりになると足腰の筋肉を使う機会が減ります。
すると、
- 立ち上がれない
- 歩けない
- トイレに行けない
など、日常生活に大きな支障が出てきます。
筋力は使わない期間が長いほど低下しやすく、一度失われると回復には時間がかかります。
② 転倒や骨折のリスクが高まる
筋力やバランス能力が低下すると転倒しやすくなります。
特に高齢者では骨折をきっかけに介護が必要になることも少なくありません。
「転ぶのが怖いから動かない」
という状態になると、さらに筋力が低下する悪循環に陥ります。
③ 心肺機能が低下する
寝たきりになると全身の筋肉を使う機会が減るため、心臓や肺の働きも低下していきます。
歩くことや立ち上がることは、足の筋肉だけでなく心肺機能にも適度な刺激を与えています。
しかし、ベッド上で過ごす時間が長くなると、
- 心臓の働きが低下する
- 肺を十分に使わなくなる
- 持久力が低下する
といった変化が起こります。
その結果、
- トイレまで歩くだけで息切れする
- 着替えで疲れてしまう
- 少し動いただけで休憩が必要になる
など、日常生活の活動範囲が狭くなってしまいます。
理学療法士の立場から見ると、寝たきりによる体力低下は筋力低下と同じくらい大きな問題です。
④ 認知機能が低下しやすくなる
身体を動かす機会が減ると脳への刺激も減少します。
また、外出や人との交流が少なくなることで、
- 物忘れ
- 意欲低下
- 認知機能の低下
につながる可能性があります。
身体と脳は密接に関係しています。
身体を動かすことは脳の健康維持にも役立ちます。
⑤ 肺炎や床ずれのリスクが高まる
長時間同じ姿勢で過ごすことで、
- 誤嚥性肺炎
- 床ずれ(褥瘡)
- 血栓症
などのリスクが高まります。
これらは入院や体調悪化の原因にもなるため注意が必要です。
⑥ 自分らしい生活が難しくなる
寝たきりになると、
- 趣味を楽しめない
- 外出できない
- 家族との活動が制限される
など、生活の自由が大きく失われます。
健康寿命とは、自分らしく生活できる期間のことです。
寝たきり予防は単に長生きするためではなく、「自分らしく生きるため」に大切なのです。
リハビリ職が考える寝たきり予防
寝たきり予防で大切なのは、特別な運動をすることではありません。
日常生活の中で少しでも身体を動かし続けることです。
例えば、
- できるだけ自分で立ち上がる
- トイレまで歩く
- 家事を行う
- 散歩をする
- 人と交流する
といった活動が、身体機能の維持につながります。
私たち理学療法士は、その方の状態に合わせて活動量を増やしていくことを大切にしています。
寝たきりの方には起き上がることから、座れる方には立ち上がりを、歩ける方には活動範囲を広げることを目標にします。
この考え方については、別の記事で詳しく紹介したいと思います。
家族ができるサポート
ご家族は心配のあまり、つい何でも手伝ってしまうことがあります。
しかし、過剰な介助は本人の能力低下につながる場合があります。
大切なのは、
「できないことを手伝う」
ではなく、
「できることは続けてもらう」
という考え方です。
時間がかかっても、自分で行うことが最大のリハビリになります。
まとめ
寝たきりになると、
- 筋力低下
- 転倒リスクの増加
- 心肺機能の低下
- 認知機能の低下
- 肺炎や床ずれ
- 生活の質の低下
など、さまざまな問題が生じます。
人間の身体は使わない機能から衰えていきます。
筋肉だけでなく、心臓や肺の働きも同じです。
理学療法士として多くの高齢者を見てきましたが、寝たきり予防で最も大切なのは「動ける範囲で動き続けること」です。
今日の小さな活動の積み重ねが、将来の健康な生活につながります。
【この記事の執筆者】
usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)
理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。


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