高齢者が自宅で転倒すると、家族は「大丈夫?」「すぐに起こしたほうがいい?」と慌ててしまうことがあります。
転倒した本人に痛みがないように見えても、あとから症状が現れることもあるため、転倒後にはいくつか確認しておきたいポイントがあります。
私は特別養護老人ホームで理学療法士として勤務しています。
施設で利用者さんが転倒した場合には、ケガの有無だけでなく、「どこで」「何をしていて」「どのように転倒したのか」「転倒後に普段と違う変化がないか」といった点も確認します。
今回は、施設で転倒が起こったときに確認している内容を、家庭で高齢者が転倒した場合にも役立つように整理して紹介します。

高齢者が転倒したら、まず何を確認する?
転倒した直後は、すぐに起こそうとするのではなく、まず本人の状態を確認します。
特に確認したいのは次のポイントです。
- 意識や会話に変化がないか
- 頭を打っていないか
- 出血や傷がないか
- 痛みがないか
- 手足を動かせるか
- 普段と比べて動きに変化がないか
- 転倒したときの状況が分かるか
「立てるから大丈夫」と判断するのではなく、転倒前と比べて変化がないかを見ることが大切です。
① 頭を打っていないか確認する
転倒したときに、頭を打っていないか確認します。
本人が「打っていない」と話していても、転倒した状況によっては頭をぶつけている可能性があります。
特に、
- 頭に腫れや傷がある
- 出血している
- 強い頭痛を訴えている
- 吐き気や嘔吐がある
- 意識や会話の様子がおかしい
- いつもより反応が鈍い
などの変化がある場合には注意が必要です。
このような場合は、無理に起こしたり歩かせたりせず、医療機関への相談を検討してください。
② 痛みがないか確認する
転倒後は、本人に痛みがないか確認します。
特に確認したいのは、
- 腰
- 股関節
- 膝
- 肩
- 肘
- 手首
などです。
高齢者の場合、転倒直後には強い痛みを訴えなくても、時間が経ってから痛みが出てくることがあります。
また、認知症がある方などでは、痛みをうまく伝えられない場合もあります。
そのため「痛いですか?」と聞くだけでなく、表情や動きにも注目します。
③ 手足をいつも通り動かせるか確認する
転倒する前と比べて、手足の動きに変化がないか確認します。
例えば、
「いつもは立ち上がれるのに、今日は立ち上がれない」
「いつも歩ける距離なのに、足を動かそうとしない」
「片方の足をかばっている」
といった変化です。
転倒後に明らかに動きが悪くなっている場合は、痛みや骨折などの可能性も考える必要があります。
④ いつも通りに立ったり歩いたりできるか確認する
本人の状態に問題がなさそうで、起き上がることが可能な場合でも、いきなり歩かせるのではなく、状態を確認しながら動作を見ます。
施設でも、転倒後に本人が「大丈夫」と話していても、普段と同じように動けるかを確認することがあります。
例えば、
- 起き上がれるか
- 座った姿勢を保てるか
- 立ち上がれるか
- 立ったときにふらつかないか
- いつも通り歩けるか
などです。
ただし、痛みが強い場合や頭を打った可能性がある場合などは、無理に立たせないことが大切です。
⑤ 転倒した場所を確認する
本人の身体だけでなく、転倒した場所も確認します。
「なぜ転倒したのか」を考えるためです。
例えば、
- 布団やカーペットにつまずいた
- 床が濡れていた
- 電気がついておらず暗かった
- 段差につまずいた
- 椅子から立ち上がるときにふらついた
- トイレへ向かう途中だった
- 靴やスリッパが脱げた
など、転倒した場所には原因につながる情報が残っていることがあります。
転倒した本人だけを確認して終わるのではなく、周囲の環境も確認してみましょう。
⑥ 「何をしているときだったのか」を確認する
転倒した場所と同じくらい重要なのが、転倒したときに何をしていたのかです。
例えば、
「トイレに行こうとしていた」
「ベッドから起きようとしていた」
「椅子から立ち上がろうとしていた」
「物を取ろうとしていた」
「急いで歩いていた」
などです。
同じ場所で転倒していても、原因は違うことがあります。
転倒した状況を確認することで、今後の予防方法を考えやすくなります。
⑦ 転倒する前と比べて変化がないか確認する
転倒後の確認では、「ケガがあるか」だけでなく、普段との違いを見ることも大切です。
例えば、
- 会話がいつもと違う
- 元気がない
- 食事が進まない
- 歩き方が変わった
- 立ち上がりにくくなった
- いつもより眠そう
- 痛みを訴えるようになった
などです。
高齢者の場合、転倒直後には大きな変化がなくても、その後に状態が変化することがあります。
そのため、転倒直後だけでなく、その後の様子も確認しておきましょう。
⑧ 転倒した時間や状況を記録しておく
転倒した場合は、分かる範囲で状況を記録しておくと、その後の受診や家族間での情報共有にも役立ちます。
例えば、
- 転倒した時間
- 転倒した場所
- 何をしていたか
- どのように転倒したか
- 頭を打った可能性
- 痛みの場所
- 転倒後の本人の様子
- その後の歩行や動作の状態
などです。
すべてを正確に確認できなくても、分かる範囲で記録しておきましょう。
転倒した原因を考えることも大切
転倒後の確認は、ケガの確認だけで終わりではありません。
「なぜ転倒したのか」を考えることが、次の転倒を防ぐために重要です。
例えば、夜間にトイレへ行く途中で転倒したのであれば、
- 足元が暗くなかったか
- ベッド周囲に物が置かれていなかったか
- トイレまでの動線に段差がなかったか
- 履物に問題がなかったか
- 夜間に一人で歩くことが安全だったか
などを確認します。
転倒の原因は、本人の身体能力だけとは限りません。
「身体」「動作」「環境」の3つの視点から考えると、原因を見つけやすくなります。
こんな場合は無理に起こさない
転倒したあとに、
- 強い痛みがある
- 頭を打った可能性がある
- 意識がおかしい
- 呼びかけへの反応が悪い
- 手足を動かしにくい
- 明らかに普段と様子が違う
- 立ち上がろうとしても立てない
などの状態がある場合は、無理に起こしたり歩かせたりしないことが大切です。
転倒の状況や本人の状態によっては、救急要請や医療機関への相談が必要になる場合があります。
判断に迷う場合は、自己判断せず医療機関や救急相談窓口などに相談してください。
まとめ|転倒後は「ケガ」だけでなく「原因」も確認する
高齢者が自宅で転倒した場合、家族は「ケガがないか」だけに目が向きやすくなります。
しかし、施設で転倒が起こったときには、本人の状態だけでなく、
- どこで転倒したのか
- 何をしていたのか
- どのように転倒したのか
- 頭を打っていないか
- 痛みや外傷がないか
- 普段と同じように動けるか
- 転倒後に変化がないか
- 転倒につながった環境に問題がなかったか
といった点を確認します。
家庭でも、このような視点を持って転倒後の状況を確認することで、受診やその後の見守りに必要な情報を整理しやすくなります。
そして、転倒した原因を振り返ることは、次の転倒を防ぐためにも重要です。
「転倒したから注意する」だけではなく、「なぜ転倒したのか」を家族で考えてみましょう。
【この記事の執筆者】
usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)
理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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