高齢者の転倒予防におすすめの室内履き・介護シューズ|理学療法士が選び方を解説

介護・生活動作

高齢者の転倒予防を考えるとき、「どんな靴を履けばよいのか」と悩むことがあります。

「高齢者だから介護シューズを選べばいい」と考える方もいるかもしれません。

しかし、私は必ずしもそうではないと考えています。

最近では、一般的なスニーカーにも手を使わずに履きやすい靴があります。また、介護シューズにも、足の状態や履く人の生活に合わせてさまざまなタイプがあります。

大切なのは、

「高齢者向けの靴かどうか」ではなく、「本人が生活の中で無理なく履けて、きちんと履いた状態で使用できるか」

ということです。

この記事では、理学療法士として高齢者の歩行や介護に関わってきた経験から、実際の生活場面を考えながら、室内履きや介護シューズを選ぶポイントと具体的な商品を紹介します。


高齢者の靴は「自分で正しく履けるか」が大切

高齢者の靴を選ぶとき、私は「歩きやすい靴」というだけでなく、自分で正しく履けるかという点も重要だと考えています。

例えば、

  • 腰を深く曲げることが難しい
  • 足先に手が届きにくい
  • 指先に力が入りにくい
  • 片手を使うことが難しい
  • 靴ひもを結ぶことが難しい

など、靴を履く動作そのものが負担になることがあります。

靴そのものは歩きやすくても、履くことが難しければ、毎日の生活では使いにくくなってしまいます。

また、靴をきちんと履くことが難しいと、

かかとを踏んだまま歩く

靴が完全に履けていない状態で歩く

といったことにつながる場合があります。

靴がしっかり履けていない状態は、歩行時の足元の不安定さにつながり、転倒の要因の一つになることがあります。

そのため、

「歩きやすいか」だけではなく、「本人が毎回きちんと履けるか」

まで考えて靴を選ぶことが大切です。


「自分で靴を履く」ことは生活動作にも関係します

靴を履くという動作は、単に足に靴を装着するだけではありません。

例えば、

「外に出よう」

と思ったときには、

起きる
↓
着替える
↓
靴を履く
↓
玄関まで移動する
↓
外へ出る

というように、さまざまな生活動作が関係しています。

靴を履くことが難しくなると、外出するたびに家族に手伝ってもらう必要が出てくることもあります。

反対に、本人が自分で履きやすい靴を選ぶことができれば、できる動作を維持することにもつながります。

そのため、靴選びでは「転倒しにくいか」だけでなく、

「本人が自分の生活の中で使い続けられるか」

という視点も大切です。


高齢者におすすめの室内履き・介護シューズ4タイプ

ここからは、実際の商品を例にしながら紹介します。

今回紹介するのは、次の4つのタイプ・5つの商品です。

  1. 手を使わずに履きやすいタイプ
  2. 面ファスナーで調整しやすいタイプ
  3. 柔らかいかかと付きタイプ
  4. つま先まで大きく開いて調整できるタイプ

ただし、「この商品が一番おすすめ」というものではありません。

本人の身体機能や生活環境によって、適した靴は変わります。


① 手を使わずに履きやすい「スケッチャーズ ハンズフリー スリップインズ」

「靴を履くときに、かがんで手を使うことが難しい」という方には、手を使わずに履ける靴も選択肢になります。

その代表的な商品として、スケッチャーズのハンズフリー スリップインズがあります。

最大の特徴は、手を使わずに履きやすいことです。

この商品を今回紹介する理由は、介護用品として販売されている靴だけではなく、一般的なスニーカーとして選びやすいことです。

ハンズフリー スリップインズにはさまざまなモデルがあり、サイズやデザインから選べるのも特徴です。

「介護用の靴ではなく、普通のスニーカーを履きたい」

という方にも検討しやすいでしょう。

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こんな方におすすめ

  • かがんで靴を履くことが難しい
  • 靴を履くときに手を使うのが大変
  • 家族に靴を履かせてもらうことが多い
  • 自分で靴を履いて外出したい
  • 介護シューズではなく一般的なスニーカーを選びたい
  • デザインにもこだわりたい

ただし、

「手を使わずに履ける=転倒しない靴」ではありません。

実際に履いて、

  • かかとまでしっかり入っているか
  • 足が靴の中で動きすぎないか
  • 歩いたときに脱げそうにならないか
  • 足幅が合っているか
  • 本人の歩行能力に合っているか

を確認しましょう。

「自分で履けること」と「歩きやすいこと」は分けて考える必要があります。


② 足に合わせて調整しやすい「あゆみ ダブルマジックⅢ」

「自分で靴を履くことはできるけれど、靴ひもを結ぶのは難しい」という方には、面ファスナータイプの靴も選択肢になります。

その一つが、あゆみのダブルマジックⅢです。

ダブルマジックⅢは、手を使って履くタイプですが、足の出し入れがしやすく、ベルトによって履き口の締め具合を調整しやすいことが特徴です。

靴ひもを結ぶ必要がないため、自分で靴を履く場合にも検討しやすいでしょう。

また、足囲のバリエーションがあるため、足の幅や状態に合わせて選びやすいこともポイントです。

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こんな方におすすめ

  • 靴ひもを結ぶことが難しい
  • 自分で靴を履きたい
  • 足の出し入れがしやすい靴を探している
  • 足の状態に合わせて締め具合を調整したい
  • 足幅に合う靴を探している
  • 足のむくみなどで靴の調整が必要

高齢者の場合、靴は「簡単に履けること」だけでなく、自分の足に合わせて調整し、きちんと履いた状態で使用できることも大切です。


③ 柔らかく履きやすい「SUTTO FIT(スットフィット)・エスパド」

歩行を積極的に行う方だけが、室内履きを必要としているわけではありません。

立ち上がりや歩行が難しく、車いすで過ごす時間が長い方の場合には、足先を保護するための履物という考え方もあります。

そのような場合に選択肢になるのが、SUTTO FIT(スットフィット)やエスパドです。

どちらも一言で表すと、「かかと付きのスリッパ」のような履物です。

柔らかい素材で作られており、脱ぎ履きがしやすいことが特徴です。

本人が自分で履くというよりも、介助者が靴下を履かせるような感覚で使用しやすいタイプです。

足囲は3Eのみですが、柔らかい素材なので、硬い靴が気になる方にも検討しやすいでしょう。

私が勤務する施設では、立ち上がりや歩行が難しく、車いすで過ごされることがある重度介助の方に、足先を保護する目的で使用することがあります。

積極的に歩行する方の「歩きやすい靴」というよりも、介助を受けながら生活する方の足を守るための室内履きとして考えると分かりやすいでしょう。

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SUTTO FITとエスパドの違い

どちらも柔らかく脱ぎ履きしやすいタイプですが、デザインには違いがあります。

SUTTO FITは、エスパドと比較してデザインの種類が豊富で、室内履きとしてもおしゃれな印象があります。

「介護用品らしさをできるだけ感じさせない履物を選びたい」という場合には、デザインから選ぶ方法もあります。

こんな方に検討しやすいタイプ

  • 車いすで過ごす時間が長い
  • 立ち上がりや歩行が難しい
  • 靴の脱ぎ履きを介助してもらうことが多い
  • 足先を保護したい
  • 硬い靴よりも柔らかい履物を使用したい
  • 靴下を履かせるような感覚で履物を装着したい

※歩行が不安定な方や、立位・歩行を行う方では、柔らかさや履きやすさだけでなく、歩行時の安定性も確認してください。


④ 足先まで大きく開いて調整しやすい「あゆみ オープンマジックⅢ」

足先の変形やむくみなどがあり、一般的な靴では足を入れにくい方には、靴を大きく開いて調整できるタイプも選択肢になります。

その一つが、あゆみのオープンマジックⅢです。

オープンマジックⅢは手を使って履くタイプですが、つま先部分まで大きく開けられることが特徴です。

そのため、足の状態に合わせて靴の開き具合を調整しやすく、足先に変形がある方などにも検討しやすい靴です。

また、足先まで開けられることで、指先の爪や皮膚の状態を確認しやすいというメリットもあります。

私が勤務する施設では、足先の状態を確認する必要がある方に使用しやすく、施設職員からも好評なタイプです。

特に、積極的に歩行するというよりも、立ち上がりや移乗動作はできるものの、長い距離を歩くことは少ない方に使用されることがあります。

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こんな方に検討しやすいタイプ

  • 足先に変形がある
  • 足のむくみがある
  • つま先部分の圧迫が気になる
  • 一般的な靴では足を入れにくい
  • 足の爪や皮膚の状態を確認したい
  • 立ち上がりや移乗はできるが、歩行は少ない

ただし、足先まで大きく開くからといって、誰にでも適しているわけではありません。

本人の足の状態や立位・歩行能力を確認し、実際に履いた状態で足に無理がないか、立ち上がりや移乗がしやすいかを確認することが大切です。


4つの商品を「生活の困りごと」から選ぶ

今回紹介した商品は、それぞれ特徴が違います。

「どれがおすすめ?」と考えるよりも、まずは本人が何に困っているのかを考えてみましょう。

生活上の困りごと検討したいタイプ
かがんで靴を履くのが大変スケッチャーズ
自分で靴を履きたいスケッチャーズ
靴ひもを結ぶのが難しいダブルマジックⅢ
足に合わせて締め具合を調整したいダブルマジックⅢ
足先の変形があるオープンマジックⅢ
足を靴に入れることが難しいオープンマジックⅢ
足の爪・皮膚の状態を確認したいオープンマジックⅢ
車いすで過ごす時間が長いSUTTO FIT・エスパド
足先を保護したいSUTTO FIT・エスパド
柔らかい履物を介助で履かせたいSUTTO FIT・エスパド

これはあくまで目安です。

同じ「靴を履くのが大変」という悩みでも、その理由によって適した靴は変わります。


履物を選ぶときに確認したいポイント

商品を選ぶ前に、次の点を確認してみましょう。

① 本人が自分で履けるか

本人が自分で履くことを目指す場合には、靴の構造だけでなく、実際に本人が操作できるかを確認します。

② 正しく履けるか

かかとを踏んだ状態になっていないか、足が靴の中で動きすぎていないかを確認します。

③ 足に合っているか

足の長さだけでなく、

  • 足幅
  • 足囲
  • むくみ
  • 足の変形
  • 左右差

なども考慮します。

④ 歩行能力に合っているか

歩く人なのか、立ち上がりや移乗が中心なのかによっても、必要な靴は変わります。

⑤ 毎日の生活で使い続けられるか

どれだけ機能が優れていても、本人が嫌がったり、履くことが難しかったりすれば、毎日の生活では使いにくくなります。


オンラインで購入するときの注意点

現在は、靴をインターネットで購入することも多くなりました。

ただし、靴は実際に履いてみないと分からない部分があります。

特に高齢者の場合、

「サイズが合っている=歩きやすい」

とは限りません。

購入前には、

  • 足のサイズ
  • 足幅・足囲
  • 履き口の広さ
  • 靴の重さ
  • かかとの形
  • 調整方法
  • 返品・交換条件

などを確認しましょう。

可能であれば、実際に試着できる店舗などで確認する方法もあります。


「履きやすい靴」と「歩きやすい靴」は同じではありません

ここは靴選びで特に注意してほしいポイントです。

例えば、手を使わず簡単に履ける靴でも、

「歩くと足が靴の中で動く」

「かかとが浮いてしまう」

「靴が重く感じる」

「本人の歩き方に合わない」

ということがあります。

逆に、歩きやすい靴でも、本人が一人で履けなければ日常生活では使いにくくなります。

そのため、

①自分で履ける

↓

②正しく履ける

↓

③歩きやすい

↓

④毎日の生活で使い続けられる

というところまで考えて選ぶことが大切です。


靴を変えれば転倒を防げるわけではありません

靴は転倒予防の一つの要素ですが、靴を変えれば転倒がなくなるわけではありません。

転倒には、

  • 筋力
  • バランス能力
  • 歩行能力
  • 視力
  • 認知機能
  • 薬の影響
  • 夜間の暗さ
  • 段差
  • 床の状態
  • 家の中での動作

など、さまざまな要因が関係します。

そのため、

「靴だけを変える」のではなく、「本人の身体機能や生活環境と合わせて考える」

ことが大切です。


こんな場合は靴以外の対策も考えましょう

次のような場合には、靴だけで対応しようとしないことも重要です。

  • 靴を履いてもふらつきが強い
  • 歩行器や杖が必要
  • 夜間に転倒することが多い
  • 家の中に段差が多い
  • 廊下やトイレが暗い
  • 靴を正しく履くこと自体が難しい
  • 認知機能の低下などで靴の扱いが難しい

このような場合には、歩行補助具や環境調整などを含めて考える必要があります。


よくある質問

Q. 高齢者は介護シューズを履いたほうがいいですか?

必ずしもそうではありません。

大切なのは「介護シューズかどうか」ではなく、

本人の身体機能と生活に合っていて、自分で正しく履けるか

ということです。

一般的なスニーカーの中にも、手を使わず履きやすいタイプがあります。


Q. 手を使わずに履ける靴なら転倒予防になりますか?

手を使わずに履けることは、靴を正しく履くための一つのメリットになります。

ただし、それだけで転倒を防げるわけではありません。

履いた後に、

  • かかとがしっかり入っている
  • 足が靴の中で動きすぎない
  • 歩行時に脱げない

などを確認しましょう。


Q. かかとを踏んで靴を履いても大丈夫ですか?

靴の種類によりますが、本来かかとまで入れて使用する靴であれば、かかとを踏んだ状態での使用はおすすめできません。

靴が足についてこなかったり、歩き方が変わったりする可能性があります。

「本人が自分で履ける靴を選ぶ」ことも大切です。


Q. 車いす中心の生活でも靴は必要ですか?

立ち上がりや移乗を行う方では、足元の保護という観点から履物を使用することがあります。

一方で、歩行をほとんど行わない方と、歩行練習を行う方では、必要な履物の特徴が異なります。

本人がどのような動作をするのかを考えて選ぶことが大切です。


まとめ|「高齢者向け」より「本人が使える靴」を選ぶ

高齢者の転倒予防を考えるとき、靴選びは大切なポイントの一つです。

しかし、

「高齢者だから介護シューズ」

と決める必要はありません。

一般的なスニーカーにも、手を使わずに履きやすいスケッチャーズのハンズフリー スリップインズがあります。

また、介護シューズにも、

  • 足に合わせて調整しやすいダブルマジックⅢ
  • 柔らかく足先を保護しやすいSUTTO FIT・エスパド
  • つま先まで大きく開けられるオープンマジックⅢ

など、それぞれ違った特徴があります。

大切なのは、

本人が自分で履けるか

正しく履けるか

歩きやすいか

毎日の生活で使い続けられるか

という視点です。

靴を選ぶときには、「どの商品が一番良いか」ではなく、

「この人の今の生活には、どんな靴が合っているのか」

から考えてみてください。

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【この記事の執筆者】

usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)

理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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