認知症の方の生活を見守るために、GPSやセンサー、見守りカメラなどの機器を検討するご家族もいると思います。
しかし、見守り機器にはそれぞれ役割があります。
「認知症だからGPSを付ければいい」というわけではありません。
見守り機器を考える前に、まず「なぜそのような行動をするのか」を考えることも大切です。
▶ 認知症の方が歩き回る理由とは?介護現場で実践できる対応方法
大切なのは、
「何を知りたいのか」
を最初に考えることです。
たとえば、
- 外出したあと「今どこにいるのか」を知りたい
- 「玄関から外に出たこと」を知りたい
- 自宅で「今何をしているのか」を確認したい
では、必要になる機器が変わります。
この記事では、理学療法士として高齢者・認知症の方の生活を見てきた経験をもとに、GPS・センサー・見守りカメラの違いと、選ぶときに確認したいポイントを解説します。
なお、この記事で紹介する商品について、私は実際に使用した経験はありません。メーカーが公表している情報や商品仕様をもとに、見守り機器を選ぶ際の一例として紹介します。
認知症の方の見守り機器は「何を知りたいか」で選ぶ

見守り機器を選ぶときは、まず「何を確認したいのか」を考えてみましょう。
「今どこにいるか」を知りたい場合
認知症の方が一人で外出することがあり、
「今どこにいるのだろう?」
という状況が心配な場合は、GPSタイプの見守り機器を検討できます。
GPSタイプは、本人が機器を持って外出することで、スマートフォンなどから現在地を確認できるものです。
ただし、GPSは本人が持って外出してくれることが前提になります。
持つことを嫌がる方や、外してしまう方では、別の方法を考える必要があります。
また、商品によって大きさや重さ、測位方法、充電頻度、通信料金などが異なります。
そのため、GPSを選ぶ場合は、本人が無理なく持てるか、家族が継続して管理できるかを確認することが大切です。
「外に出たこと」を知りたい場合
認知症の方が自宅から一人で外に出てしまうことが心配なら、玄関などの開閉を知らせるセンサーを検討できます。
たとえば、エジソンスマートのドアセンサーは、ドアの開閉を検知し、スマートフォンに通知する機能があります。
「玄関が開いた」という情報を家族が確認できるため、
「いつの間にか外に出ていた」
という状況を把握するための補助として利用できます。
ただし、このタイプの機器は、
「ドアが開いた」ことを知らせるものであって、「認知症の方が外出した」と判断するものではありません。
本人以外がドアを開けた場合にも反応します。
また、Wi-Fi環境やスマートフォン、専用アプリなどが必要になります。
そのため、設置場所や自宅の通信環境を確認したうえで検討しましょう。
認知症の方が外に出てしまう理由や、行方不明を防ぐために家族が確認したいポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶認知症の方が外に出てしまうのはなぜ?行方不明を防ぐために家族が確認したいポイント
「自宅で何をしているか」を確認したい場合
自宅で一人になる時間があり、
「今、家の中でどうしているのだろう?」
と確認したい場合には、見守りカメラを検討できます。
見守りカメラなら、スマートフォンから自宅の映像を確認できます。
商品によっては、
- 動きを検知して知らせる
- 夜間の様子を確認する
- カメラの向きを変える
- 音声で会話する
- 映像を保存する
といった機能があります。
ただし、見守りカメラは生活の様子を映像で確認する機器です。
そのため、本人のプライバシーに十分配慮する必要があります。
「家族だから見てもいい」と単純に考えるのではなく、本人の理解や同意、どこに設置するのかなどを家族で話し合っておくことが大切です。
認知症の方の見守りに使われる主な機器
ここまでの内容を整理すると、主に次の3種類があります。
| 機器 | 主に確認できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| GPS | 現在地 | 外出後の居場所を確認したい |
| センサー | ドアの開閉・人の動きなど | 外出や動きを把握したい |
| 見守りカメラ | 自宅の様子 | 家の中での行動を確認したい |
重要なのは、それぞれ役割が違うことです。
「見守り機器を買えば安心」と考えるのではなく、困っている状況に合わせて選びましょう。
GPS・センサー・見守りカメラの違いを比較

GPS
GPSの大きな特徴は、外出したあとに現在地を確認できることです。
認知症の方が一人で歩いて外出することがあり、家族が居場所を確認したい場合に検討できます。
一方で、
- 本人が機器を持つ必要がある
- 充電が必要
- 通信費がかかる商品がある
- 屋内などでは位置情報が不安定になる場合がある
といった点には注意が必要です。
センサー
センサーは、ドアの開閉や人の動きなど、決められた場所での変化を知らせることができます。
GPSのように現在地を調べるものではありません。
そのため、
「外に出たことを早く知りたい」
「夜間に玄関から出ていないか確認したい」
など、特定の場所での動きを確認したい場合に向いています。
見守りカメラ
見守りカメラは、自宅の中の様子を映像で確認できることが特徴です。
離れて暮らす家族が、
「ちゃんと起きているかな?」
「転んでいないかな?」
「いつもと違う様子はないかな?」
などを確認するための補助になります。
一方で、本人のプライバシーへの配慮が必要です。
「見守り機器なら何でもいい」わけではありません
認知症の方の状態によって、必要な機器は変わります。
たとえば、歩行できる方でも、
- 道に迷う
- 自宅への帰り道が分からなくなる
- 玄関から外へ出てしまう
- 危険な場所へ向かってしまう
など、困っている内容はそれぞれ違います。
そのため、
「認知症だからGPS」
と最初から決めるのではなく、
「何が心配なのか」
を家族で確認することが重要です。
認知症の方の状態から見守り機器を選ぶ
一人で歩いて外出することがある
外出後の居場所を知りたいのであれば、GPSタイプを検討できます。
特に、本人が機器を身につけることに抵抗がないか確認しましょう。
バッグなどに入れて持ってもらう方法もありますが、本人がバッグを置いて外出するとGPSも一緒に残ってしまいます。
歩行はできるが、判断が難しい
この場合は、GPSだけでなく、
「玄関から出たことを早く知る」
という方法も考えられます。
玄関の開閉センサーなどを使えば、外出のきっかけとなるドアの開閉を家族が確認できます。
ただし、センサーだけで外出を完全に防止できるわけではありません。
夜間に動くことが多い
夜間にトイレへ行く、部屋から出る、玄関へ向かうなどの行動がある場合は、センサーや見守りカメラを検討できます。
ただし、夜間の行動には転倒リスクもあります。
夜間の転倒を防ぐためには、見守り機器だけでなく、照明や移動経路、履物などの環境も確認することが大切です。
▶ 高齢者の夜間トイレの転倒を防ぐ5つの方法|理学療法士が施設での経験から解説
機器を設置するだけでなく、
- 足元の明るさ
- 通路に物がないか
- ベッドからトイレまでの動線
- 履物
- 手すりの必要性
なども一緒に確認しましょう。
自宅での転倒を防ぐためには、見守り機器だけでなく、住環境そのものを確認することも重要です。
▶ 高齢者の転倒予防に必要な環境整備とは?理学療法士が自宅で確認したいポイント
機器を身につけることが難しい
GPSを嫌がる、外してしまう、持ち物を忘れてしまう場合には、GPSだけに頼るのは難しくなります。
その場合は、玄関センサーや見守りカメラなど、本人が身につけなくても使用できる方法を検討できます。
GPSを選ぶときに確認したいポイント
GPSを選ぶ場合は、次の項目を確認しましょう。
① 本人が持ちやすい大きさ・重さか
毎日持ってもらうためには、サイズや重量も重要です。
② 現在地をどのように確認するのか
GPSだけでなく、Wi-Fiや携帯基地局などを利用する商品もあります。
どのような測位方法なのか確認しておきましょう。
③ 通知機能があるか
現在地の確認だけでなく、どのような通知機能があるのかも確認しましょう。
④ 充電頻度
毎日充電が必要なのか、数週間使用できるのかなど、使用時間を確認します。
⑤ 防水・防塵性能
屋外へ持ち出すものなので、雨や水濡れへの対応も確認しておきましょう。
⑥ 月額料金
本体価格だけではなく、通信料金などのランニングコストも確認しましょう。
センサーを選ぶときに確認したいポイント
センサーの場合は、何を検知するのかを確認することが重要です。
① 何を検知するセンサーなのか
ドアの開閉を検知するタイプなのか、人の動きを検知するタイプなのかを確認しましょう。
② 通知方法
音だけで知らせるのか、スマートフォンへ通知できるのかによって使い方が変わります。
③ Wi-Fiなどの通信環境
スマートフォンへ通知するタイプでは、自宅のWi-Fiなどが必要になる場合があります。
④ どこに設置するのか
玄関、勝手口、寝室、トイレなど、心配な場所に設置できるか確認します。
⑤ 誤検知や通知の見落とし
センサーは「変化」を検知するものです。
通知が来なかったからといって、必ずしも安全とは限りません。
機器の通知だけに頼らないことも大切です。
見守りカメラを選ぶときに確認したいポイント
見守りカメラを選ぶ場合は、機能だけでなく、プライバシーへの配慮も確認しましょう。
① 昼間だけでなく夜間も確認できるか
夜間の様子を確認したい場合は、ナイトビジョンなどの機能を確認します。
② 動きを検知できるか
動体検知や通知機能があると、常に画面を見続ける必要がありません。
③ カメラの向きを変えられるか
首振り機能があれば、一台で広い範囲を確認できる場合があります。
④ 音声機能
マイクやスピーカーを搭載していれば、離れた場所から声をかけられる商品もあります。
⑤ 映像を保存できるか
microSDカードやクラウドなど、保存方法と費用を確認しましょう。
⑥ プライバシー機能
カメラを使用しないときにレンズを隠せるかなど、本人のプライバシーに配慮した機能も確認しましょう。
見守り機器だけに頼らないことも大切
見守り機器を設置すると安心感があります。
しかし、機器だけで認知症の方の安全をすべて確保できるわけではありません。
私は介護現場で高齢者の生活を見てきましたが、転倒や事故を防ぐためには、本人の身体状況や認知機能、生活環境を合わせて考えることが重要だと感じています。
たとえば、
- 歩行能力が変化していないか
- 最近ふらつきが増えていないか
- 夜間に起きる回数が増えていないか
- トイレまで安全に移動できるか
- 玄関周辺に危険な場所がないか
- 履物が足に合っているか
- 本人が機器を嫌がっていないか
などです。
見守り機器は、こうした生活を支えるための補助的な道具として考えるとよいでしょう。
認知症の方の見守り機器を選ぶときのチェックリスト
購入前に、次の項目を確認してみましょう。
「何を知りたいのか」
□ 今どこにいるか知りたい
□ 外に出たことを知りたい
□ 自宅での様子を確認したい
「本人・自宅に無理なく導入できるか」
□ GPSを持ってくれる
□ センサーを必要な場所に設置できる
□ カメラを設置することについて本人・家族で話し合っている
「家族が無理なく使えるか」
□ スマートフォンで確認できる
□ 通知を確認できる
□ 充電や電池交換を続けられる
□ 月額料金などを継続して負担できる
「自宅の環境に合っているか」
□ Wi-Fiが必要な機器では、自宅の通信環境を確認する
□ 玄関など必要な場所に設置できる
□ カメラの視野に必要な場所が入っている
□ 通路や玄関などの環境整備もできている
見守り機器の一例を紹介

ここでは、「何を知りたいのか」という目的別に、見守り機器の一例を紹介します。
① 今どこにいるか知りたいなら「みまもりGPS NC002A」
外出後の現在地を確認したい場合に検討できるGPSタイプです。
「みまもりGPS NC002A」は、GPS・Wi-Fi・携帯基地局などを利用して位置情報を確認できます。
本体は約60gで、防水・防塵にも対応しています。
月額料金がかかるため、本体価格だけでなく通信料金などのランニングコストも確認しましょう。
一方で、本人が持つこと、充電することが必要です。
「GPSを持ってくれるか」
という点は、購入前に考えておきたいポイントです。
GPSを利用した見守りを検討している場合は、サイズや料金、充電方法などを確認したうえで、実際の商品情報を確認してみましょう。
② 外に出たことを知りたいなら「エジソンスマート ドアセンサー」
玄関などのドアが開いたことをスマートフォンへ通知するタイプのセンサーです。
「認知症の方が玄関から外に出てしまうことが心配」という場合に、玄関の開閉を把握するための補助として検討できます。
ただし、ドアが開いたことを知らせる機器なので、本人が外出したことを直接判断するものではありません。
また、使用にはWi-Fi環境などの条件があります。
「玄関が開いたら家族が確認する」というように、家族の見守りと組み合わせて使うことが大切です。
玄関の開閉をきっかけに見守る方法を検討している場合は、自宅のWi-Fi環境などを確認してから商品を選びましょう。
③ 自宅での様子を確認したいなら「SwitchBot 見守りカメラPlus 5MP」
自宅にいる認知症の方の様子をスマートフォンから確認したい場合は、見守りカメラを検討できます。
「SwitchBot 見守りカメラPlus 5MP」は、500万画素のカメラで、水平360°・垂直115°の首振りに対応しています。動体検知、自動追跡、双方向音声などの機能があり、microSDカードによる保存にも対応しています。
また、プライバシーモードではレンズを物理的に隠すことができます。
カメラは生活の様子を確認できる一方、本人のプライバシーに関わる機器です。
「どこに設置するか」「いつ使用するか」「本人にどう説明するか」
を家族で考えてから導入しましょう。
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自宅での様子を遠隔から確認したい場合は、設置場所やプライバシーへの配慮を考えたうえで、商品の詳しい機能を確認してみましょう。
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まとめ|見守り機器は「何を知りたいか」で選びましょう
認知症の方の見守り機器には、GPS・センサー・見守りカメラなどがあります。
それぞれ役割が違います。
- 今どこにいるか知りたい → GPS
- 外に出たことを知りたい → ドアなどのセンサー
- 自宅で何をしているか確認したい → 見守りカメラ
大切なのは、「認知症だからこの機器」という選び方ではありません。
本人の認知機能や歩行能力、外出の状況、家族の見守り体制などを考えて、必要な機器を選ぶことです。
そして、見守り機器はあくまで家族の見守りを補助する道具です。
機器を導入すると同時に、自宅の環境や本人の身体状態にも目を向けてみましょう。
認知症の方の外出や行方不明が心配な場合は、見守り機器だけでなく、家族ができる見守り方法についても考えておくことが大切です。
「最近、外に出ることが増えた」「転倒が増えた」「夜間に一人で動くことが多くなった」など、以前と違う変化がある場合には、見守り機器だけで解決しようとせず、医療・介護の専門職にも相談することをおすすめします。
【この記事の執筆者】
usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)
理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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