認知症の方が外に出てしまうのはなぜ?行方不明を防ぐために家族が確認したいポイント

介護・生活動作

認知症の方が、自宅や施設から外に出ようとすることがあります。

家族からすると、「なぜ外に出ようとするの?」「一人で外に出てしまったらどうしよう」と心配になることもあると思います。

認知症の方が外に出ようとする行動には、本人なりの理由がある場合があります。

例えば、

  • 「家に帰らないといけない」
  • 「家族が待っている」
  • 「仕事に行かないといけない」
  • 「銀行に行く予定がある」
  • 「ここにいても仕方がない」

など、本人にとっては目的のある行動として外に出ようとしていることがあります。

そのため、「外に出ないようにする」だけを考えるのではなく、なぜ外に出ようとしているのか、どの程度自分で移動できるのか、外に出た場合にどう対応するかを考えておくことが大切です。

この記事では、理学療法士として高齢者の方と関わってきた経験から、認知症の方が外に出てしまう場合に家族が確認しておきたいポイントについて解説します。


認知症の方が外に出てしまうのには理由があります

認知症の方が外に出ようとする場合、単純に「歩きたいから」という理由だけとは限りません。

本人の中では、今いる場所から移動する必要があると考えていることがあります。

「家に帰りたい」と言って外に出ようとする

認知症の方から、

「家に帰らないと」

という言葉を聞くことがあります。

現在住んでいる場所が本人にとって「自分の家」と認識できていない場合や、以前住んでいた場所を思い出して帰ろうとする場合もあります。

私が介護現場で関わってきた中でも、

「家族が待っている」

「仕事に行かないといけない」

「家に帰りたい」

「悪いところはないから、ここから出してほしい」

「銀行に行く予定がある」

など、その方によって外に出ようとする理由はさまざまでした。

本人にとっては、その時点では必要な行動として考えている可能性があります。

今いる場所に不安や違和感を感じていることもあります

認知症の方にとって、今いる場所がどこなのか分からなくなったり、周囲の状況を理解しにくくなったりすることがあります。

そのため、家族からすると突然外に出ようとしているように見えても、本人の中では「ここにいてはいけない」「帰らなければならない」と感じている可能性があります。

以前の生活習慣や役割が行動につながることもあります

長年続けてきた生活習慣や仕事、家族との生活などが、現在の行動につながることもあります。

例えば、以前毎日仕事へ行っていた方であれば、「仕事へ行かなければ」と考えて外に出ようとすることがあります。

そのため、外に出ようとする行動を見たときには、単純に「徘徊している」と考えるのではなく、本人が何をしようとしているのかを考えてみることが大切です。

認知症の方が歩き回る理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

認知症の方が歩き回る理由とは?介護現場で実践できる対応方法


「外に出ないようにする」だけではなく、まず本人の行動を考える

外に出ようとする方への対応では、まず本人の行動を観察してみましょう。

本人はどこへ行こうとしているのか?

「外に出ようとしている」という事実だけではなく、本人がどこへ向かおうとしているのかを考えてみます。

例えば、

  • 以前住んでいた家
  • 職場
  • よく利用していた店
  • 家族のところ
  • 銀行や病院
  • 毎日の散歩コース

など、本人が以前よく行っていた場所が目的地になっている可能性があります。

いつ外に出ようとするのか?

外に出ようとする時間帯にも注目します。

朝なのか、夕方なのか、夜間なのか。

毎日同じ時間帯に外へ出ようとするのであれば、その時間に何をしていたのかを考えてみると、本人の行動を理解するヒントになることがあります。

外に出ようとする前に何をしていたのか?

外に出る直前の行動を確認することも大切です。

例えば、

「何かを探していた」

「家族を探していた」

「トイレへ行こうとしていた」

「落ち着かず部屋を行き来していた」

など、外に出る前に何らかのきっかけがあるかもしれません。


外に出てしまう可能性を考えるときは「歩行能力」も確認する

認知症の方が外に出てしまう可能性を考えるときには、認知症の症状だけでなく、実際にどの程度自分で移動できるのかも確認しておきたいポイントです。

例えば、

  • 一人で歩ける
  • 杖を使って歩ける
  • 歩行器を使って歩ける
  • 手すりや壁につかまりながら移動できる
  • 車いすを自分で動かせる

など、人によって移動能力は異なります。

「歩けること」と「安全に一人で外出できること」は同じではありません

ここは特に注意したいところです。

歩くことができるからといって、安全に一人で外出できるとは限りません。

認知症の方の場合、

「目的地まで行ける身体能力」

と

「道順を覚えている」

「危険な場所を判断できる」

「自分がどこにいるのか分かる」

「困ったときに助けを求められる」

ことは別に考える必要があります。

私が理学療法士として認知症の方のリハビリに関わっていると、疲れを訴えることが少なく、本人が休もうとするまで動き続けることがあります。

また、外見だけを見ると一般的な高齢者と変わらないように見える方もいます。

簡単な受け答えができる方であれば、初対面の人からは認知症があることに気づかれにくい場合もあります。

そのため、「歩けるから大丈夫」と考えるのではなく、認知機能と身体能力の両方から、一人で外に出ることが安全なのかを考える必要があります。


自宅の「外に出るまでの環境」を確認する

認知症の方が外に出てしまう可能性を考えるときは、玄関だけを見るのではなく、本人が普段過ごしている場所から外へ出るまでの経路を確認してみましょう。

玄関や勝手口まで一人で移動できるか

まず確認したいのが、本人が一人で玄関や勝手口まで移動できるかどうかです。

寝室から玄関までの距離や、途中に段差・家具・障害物がないかなども確認します。

特に夜間は、暗い中を移動することで転倒する可能性もあります。

靴を自分で履いて外に出られるか

靴を自分で履くことができるかも確認しておきましょう。

認知症の症状だけでなく、身体機能の低下や足の痛み、関節の動かしにくさなどによって、靴を履くことが難しくなる場合もあります。

一方で、自分で靴を履いて外へ出られる方であれば、外出までの準備を自分で行えるため、家族が気づかないうちに外へ出てしまう可能性があります。

夜間でも出入口まで移動できる環境になっていないか

夜間に外へ出ようとする場合には、寝室から玄関までの環境も確認してみましょう。

例えば、

  • 廊下が暗い
  • 足元に物が置いてある
  • 玄関までの動線に段差がある
  • 靴をすぐに履ける場所に置いている
  • 玄関の開閉に家族が気づきにくい

などです。

転倒予防という視点から自宅の環境を確認する方法については、こちらの記事も参考にしてください。

高齢者の転倒予防に必要な環境整備とは?理学療法士が自宅で確認したいポイント

外に出た場合、どの方向へ行く可能性があるか

本人が以前からよく行っていた場所や、生活習慣から考えられる目的地がある場合には、その方向も考えておきます。

例えば、

「以前の自宅がある方向」

「昔の職場がある方向」

「よく買い物に行っていた方向」

などです。

本人が外へ出てしまった場合に、家族が探す際の手がかりになることがあります。


家族だけで見守ることが難しい場合はどうする?

認知症の方が外に出てしまう可能性がある場合、家族だけで対応し続けるのは簡単ではありません。

特に、仕事や家事をしながら24時間見守ることは難しいと思います。

ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

「最近、外へ出ようとすることが増えた」

「実際に一人で外へ出てしまったことがある」

という場合には、家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

本人の生活状況や認知症の状態を踏まえて、利用できる介護サービスや見守り方法について相談できる場合があります。

地域の見守り・行方不明時の支援を確認する

自治体によっては、認知症の方が行方不明になった場合に、地域の協力を得て早期発見を目指す仕組みがあります。

また、事前に本人の情報を登録しておくことで、行方不明になった際の捜索に役立てる制度を設けている自治体もあります。

こうした制度の内容や登録方法は地域によって異なります。

「最近、外へ出ようとすることが増えた」

「一人で外に出てしまったことがある」

という場合には、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談し、お住まいの地域で利用できる見守り制度や、行方不明時の支援について事前に確認しておくとよいでしょう。


見守りに使える商品・サービスも選択肢になります

家族だけで常に見守ることが難しい場合には、見守りに使える商品やサービスを利用する方法もあります。

ただし、最初から「GPSを買えばいい」と考えるのではなく、何を確認したいのかを先に考えることが大切です。

玄関の開閉を知らせるセンサー

「玄関から外へ出たことを早く知りたい」という場合には、玄関の開閉を知らせるセンサーやチャイムなどが選択肢になります。

家族が別の部屋にいる場合でも、玄関が開いたことに気づきやすくなります。

人感センサー・見守りカメラ

「夜間に起きて動いていることを知りたい」

「家族がいない時間の様子を確認したい」

という場合には、人感センサーや見守りカメラなどが選択肢になります。

ただし、カメラを使用する場合には、本人のプライバシーにも配慮する必要があります。

GPS・位置情報端末

「外に出てしまう可能性がある」

「外出した後の位置を確認できるようにしたい」

という場合には、GPSなどの位置情報端末も選択肢になります。

自治体によっては、認知症の方が行方不明になった場合に備えて、GPSなどの位置情報機器の利用費を助成している場合があります。

ただし、対象となる方や助成内容、利用できる機器などは自治体によって異なります。

GPSを検討する場合は、商品だけを見るのではなく、お住まいの地域で利用できる制度がないかを先に確認することもおすすめします。

GPS・センサー・見守りカメラには、それぞれ確認できることや使い方に違いがあります。
どのような見守り機器を選べばよいかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

認知症の方の見守り機器の選び方|GPS・センサー・カメラの違いを理学療法士が解説


「外に出ないための対策」と「出た後の対策」は分けて考える

認知症の方の外出対策を考えるときには、

「外に出ないようにする」

だけではなく、

「外に出てしまった場合にどうするか」

まで考えておくことが大切です。

① 外に出るきっかけを減らす

本人が外に出ようとする理由を考え、その原因を減らせないか確認します。

例えば、

  • 不安を感じていないか
  • 家に帰りたいと思っていないか
  • 以前の生活習慣が関係していないか
  • 何かを探していないか

などです。

本人の行動を理解することで、対応方法が見つかることがあります。

② 外に出てしまった場合に早く気づく

次に、外に出てしまったことを早く知るための方法を考えます。

玄関センサーなどを利用することで、本人が外へ出たことに早く気づける場合があります。

③ 行方不明になった場合に早く見つける準備をする

それでも外へ出てしまう可能性がある場合には、

  • 本人の写真を準備しておく
  • 普段の服装を把握しておく
  • よく行く場所を家族で共有する
  • 緊急時の連絡先を確認しておく
  • 地域で利用できる支援制度を確認しておく
  • 必要に応じて位置情報端末を検討する

など、事前に準備しておくことが大切です。


認知症の方が外に出てしまうとき、家族が確認したい5つのポイント

ここまでの内容をまとめると、確認したいポイントは次の5つです。

1.なぜ外に出ようとしているのか

「家に帰りたい」「仕事に行かないといけない」など、本人なりの理由があるかもしれません。

2.どこへ行こうとしているのか

以前住んでいた場所や職場、よく利用していた場所など、本人が目的地として考えている場所を確認します。

3.どの程度、自分で移動できるのか

一人歩行なのか、杖や歩行器を使用しているのか、車いすを自分で操作できるのかなどを確認します。

「歩ける=一人で安全に外出できる」ではないことにも注意しましょう。

4.どこから外に出る可能性があるのか

玄関だけでなく、勝手口やベランダなど、本人が外へ出られる場所を確認します。

また、寝室から出入口までの移動経路も確認しておきましょう。

5.外に出てしまった場合、どうやって早く気づき、見つけるか

家族だけで対応するのが難しい場合には、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談し、利用できる地域の支援制度を確認しておきます。

必要に応じて、玄関センサーや見守りカメラ、GPSなどの利用も検討します。


まとめ

認知症の方が外に出ようとする場合、家族から見ると「なぜ突然外に出ようとするのだろう」と感じることがあります。

しかし、本人にとっては、

「家に帰りたい」

「家族が待っている」

「仕事に行かないといけない」

など、何らかの目的がある場合があります。

そのため、まずはなぜ外に出ようとしているのかを考えることが大切です。

そのうえで、

  • 本人がどこへ行こうとしているのか
  • どの程度自分で移動できるのか
  • 自宅のどこから外へ出る可能性があるのか
  • 家族だけで見守ることができるのか
  • 外に出てしまった場合にどうやって早く気づくのか

を確認しておきましょう。

認知症の方への対応は、「外に出さない」ことだけが答えではありません。

本人の思いや行動を理解しながら、外に出る可能性を考え、出てしまった場合にも早く気づける準備をしておくこと。

これが、家族の安心にもつながるのではないかと私は考えています。


【この記事の執筆者】

usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)

理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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