多職種連携で取り組む転倒予防|特養で私が意識していること

リハビリの基礎知識

はじめに

特別養護老人ホームでは、利用者さんの生活を一人の職種だけで支えることはできません。

介護職員、看護職員、理学療法士をはじめ、それぞれが日々利用者さんと関わる中で得た情報を共有し、利用者さんの状態に合わせた支援を行っています。

私は理学療法士として個別機能訓練を担当していますが、転倒予防で最も大切にしているのは「リハビリを行うこと」だけではありません。

リハビリ前の情報収集、リハビリ中の評価、リハビリ後の情報共有、そして必要に応じた支援の見直しまで、多職種で連携することが利用者さんの安全につながると考えています。

今回は、私が日頃実践している多職種連携についてご紹介します。


転倒予防は情報共有から始まる

転倒は歩行能力だけが原因で起こるものではありません。

体調や認知機能、睡眠、食事量、痛みなど、さまざまな要因が重なって発生します。

そのため私は、利用者さんと関わる前に多職種から情報を確認し、「今日はいつもと違うことはないか」という視点を持ってリハビリを始めています。

事前に情報を共有しておくことで、小さな変化にも気付きやすくなり、その日の状態に合わせた対応を考えることができます。


介護職員へ確認していること

介護職員は利用者さんの生活を最も近くで支えています。

私はリハビリ前に、生活の中で気になった変化について確認しています。

例えば、

  • 夜間の睡眠状況
  • 食事や水分摂取量
  • 排泄状況
  • 日中の活動量
  • 離席や歩き回る様子
  • 声掛けへの反応
  • 「いつもと違う」と感じたこと

こうした生活の変化は、転倒リスクを考えるうえで大切な情報になります。


看護職員へ確認していること

看護職員には、身体の状態や医療的な変化について確認しています。

例えば、

  • 発熱の有無
  • バイタルサインの変化
  • 脱水が疑われる様子
  • 痛みの有無
  • 服薬内容の変更
  • 体調不良や感染症の有無

体調が少し変化しただけでも、歩行時のふらつきや注意力の低下につながることがあります。

そのため、身体機能だけではなく、体調面の情報も大切な判断材料としています。


実際に利用者さんと関わることで分かることもある

事前に記録や申し送りを確認していても、利用者さんの状態をすべて把握できるわけではありません。

実際にリハビリで関わる中で、

  • 前回は見られなかった傷やあざ
  • 皮膚の状態の変化
  • 動作時の痛み
  • 歩行や立ち上がりの変化
  • 疲れやすさ

など、新たな気付きがあることも少なくありません。

このような変化に気付いた際には、介護職員や看護職員へ情報を共有し、必要に応じて経過観察や対応の見直しにつなげています。

情報共有は、記録を確認するだけでなく、実際に利用者さんと関わって気付いたことを伝えることも重要だと考えています。


リハビリで確認した内容は多職種へ共有する

個別機能訓練では、

  • 立ち上がり動作
  • 歩行時のふらつき
  • バランス能力
  • 疲れやすさ
  • 動作中の痛み
  • 声掛けへの反応

などを確認しています。

もし普段と違う変化があれば、その内容を介護職員や看護職員へ共有します。

その日の状態に合わせて見守り方法や介助方法を検討するためには、リハビリで得た情報も欠かせません。


転倒が発生した際も多職種で連携する

多職種連携は、転倒を予防する場面だけではありません。

実際に転倒が発生した際には、理学療法士へ状況確認や身体機能の評価を依頼されることがあります。

私は転倒時の状況や利用者さんの状態を確認したうえで、立ち上がりや歩行、バランス能力などを評価します。

評価した内容は再び多職種で共有し、

  • 介助方法の見直し
  • 見守り方法の検討
  • 環境調整や福祉用具の検討

など、再発予防につながる支援を一緒に考えています。


重大な事故ではカンファレンスで再発防止を検討する

重大な転倒事故につながった場合には、日々の情報共有だけで終わらせるのではなく、後日、多職種でカンファレンスを行うことがあります。

カンファレンスでは、

  • 転倒に至った経緯
  • 当日の体調や生活状況
  • 介助方法は適切だったか
  • 環境に改善できる点はなかったか
  • 今後どのような対策が必要か

などを、それぞれの専門的な立場から話し合います。

大切なのは、誰かの責任を追及することではありません。

事故を振り返り、利用者さんが今後も安心して生活できるように支援方法を見直すことが、多職種カンファレンスの目的だと考えています。


まとめ

特別養護老人ホームでの転倒予防は、一人の職種だけで取り組めるものではありません。

私はリハビリ前に多職種から利用者さんの情報を確認し、リハビリで身体機能や動作を評価します。

そして、新たに気付いた変化を再び介護職員や看護職員へ共有し、必要に応じて支援方法の見直しにつなげています。

さらに、転倒が発生した際には状況を評価し、重大な事故では多職種カンファレンスを通して再発防止を検討します。

多職種連携とは、単に情報を伝えることではありません。

利用者さんの小さな変化や出来事をチームで共有し、それぞれの専門性を生かしながら支援を見直し続けることが、転倒予防と再発防止につながると私は考えています。


【この記事の執筆者】

usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)

理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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