高齢者の夜間トイレの転倒を防ぐ5つの方法|理学療法士が施設での経験から解説

立ち上がり・歩行・転倒予防

高齢者の転倒は、日中だけでなく夜間にも起こります。

特に「夜中にトイレへ行く」という行動には、日中とは違った転倒リスクがあります。

夜間は部屋が暗く、寝起きでふらつきやすいうえ、急いでトイレへ向かおうとすることもあります。

また、転倒はトイレまで歩いている途中だけに起こるわけではありません。

ベッドから起き上がるとき、照明をつけるとき、車いすから移乗するとき、履物を履くときなど、トイレへ向かうまでの一連の動作の中にも転倒の危険があります。

私は理学療法士として高齢者施設で勤務しています。

私の勤務する施設では、介護職員から夜間帯の転倒について報告を受けることがあります。

その報告を振り返ると、歩行可能な方の歩行中の転倒よりも、車いすを自走される方が移乗動作を行う際の転倒が多いという印象があります。

例えば、車いすのブレーキがかかっていない状態で移乗を行ったり、移乗動作中にバランスを崩して転倒し、職員が発見するケースがあります。

また、夜間の移動やトイレ動作では、靴をしっかり履けていなかったことが転倒につながっていると考えられる報告も多くあります。

一方で、職員が介助している最中や、見守りをしている状況での転倒は、私の勤務する施設ではほとんど起こっていない印象です。

このような経験から、今回は高齢者の夜間トイレの転倒を防ぐために、自宅でも確認してほしい5つのポイントを紹介します。


高齢者の夜間トイレで転倒しやすい理由

夜間のトイレでは、日中とは違う条件が重なります。

例えば、

  • 寝起きで身体が動かしにくい
  • 起き上がった直後にふらつく
  • 部屋や廊下が暗い
  • 急いでトイレへ向かおうとする
  • 履物をきちんと履けていない
  • 車いすのブレーキを忘れる
  • ベッドや車いすからの移乗時にバランスを崩す

などです。

そのため、夜間の転倒予防では「歩けるかどうか」だけを確認するのではなく、ベッドから起き上がってトイレへ行き、戻ってくるまでの一連の動作を考えることが大切です。


高齢者の夜間トイレの転倒を防ぐ5つの方法

夜間トイレでの転倒を防ぐために、家庭でできる5つの方法を紹介します。まずは全体像を確認してから、ひとつずつ見ていきましょう。

① 夜間でも足元が見えるようにする

夜間の転倒を防ぐために、まず確認したいのが照明です。

高齢者が夜中にトイレへ行くとき、部屋や廊下が暗いと、床にある物や段差などを確認しにくくなります。

特に注意したいのが、照明をつけるために立ち上がった状態でスイッチを探すことです。

例えば、

  1. 夜中に目が覚める
  2. ベッドから起き上がる
  3. 暗い中で照明のスイッチを探す
  4. 立ち上がった状態で照明をつける
  5. 明るくなってからトイレへ向かう

という動作になると、照明がつくまでの間にふらついたり、足元の物につまずいたりする可能性があります。

そのため、立ち上がってから照明をつけるのではなく、立ち上がる前から足元が確認できる環境を作ることが大切です。

例えば、

  • ベッド周辺に足元灯を設置する
  • 人感センサーライトを利用する
  • ベッドから手の届く位置に照明を置く
  • 廊下にも足元を照らす照明を設置する
  • トイレまでの通路を夜間でも確認できるようにする

などの方法があります。

私の勤務する施設では、トイレにセンサーライトが設置されていたり、夜間でも移動できるように照明が確保されています。

一方、自宅では施設のような夜間照明が整っていないこともあります。

そのため、家庭では「トイレだけを明るくする」のではなく、ベッドからトイレまで安全に移動できる明るさを確保するという視点で環境を確認しましょう。


② 起き上がった直後にすぐ歩き始めない

夜中に目が覚めてトイレへ向かうときは、起き上がった直後の動作にも注意が必要です。

寝ている状態から急に起き上がって立ち上がると、ふらつくことがあります。

特に、

  • 筋力が低下している
  • バランス能力が低下している
  • 歩行が不安定
  • 疾患やけがの影響がある
  • 日中からふらつきがある

といった方は注意が必要です。

起き上がったらすぐに歩き始めるのではなく、まず座った状態で身体を整え、立ち上がった後も安定しているか確認してから移動するようにします。

また、ベッド周囲に物を置かないことも重要です。

夜間は暗いため、日中なら避けられる物でも、つまずいてしまう可能性があります。


③ 車いすからの移乗ではブレーキを確認する

夜間トイレの転倒を考えるとき、歩行中だけを注意するのは不十分です。

特に車いすを使用している方では、ベッドやトイレへの移乗動作にも転倒の危険があります。

私の勤務する施設では、夜間帯の転倒について、車いすを自走される方が移乗動作を行う際に転倒するケースが多いという印象があります。

例えば、

  • 車いすのブレーキがかかっていない
  • 車いすと移乗先との位置関係が適切でない
  • フットレストが移乗の邪魔になっている
  • 立ち上がったときにバランスを崩す
  • 移乗途中に車いすが動いてしまう

などです。

そのため、車いすを使用している方が夜間に一人で移動する場合は、「車いすだから歩かないので安心」と考えないことが大切です。

移乗前には、

車いすのブレーキをかける

足元を確認する

必要に応じてフットレストを移動する

身体を安定させてから移乗する

というように、安全な動作ができているか確認しましょう。

また、本人がブレーキ操作を安全に行えるのかも重要です。


④ 靴や履物をきちんと履けているか確認する

夜間の移動では、履物の状態も転倒に関係します。

私の勤務する施設では、夜間の移動やトイレ動作で、靴をしっかり履けていなかったことが転倒につながったと考えられる報告が多くあります。

例えば、

  • かかとを踏んでいる
  • 靴の奥まで足が入っていない
  • 靴が大きすぎる
  • 足が靴の中で動いている
  • 急いで履いたまま歩き始める

といった状態です。

「靴を履いているから大丈夫」ではありません。

足に合った履物を正しく履けているかを確認することが大切です。

一方で、自宅では施設とは違い、家の中で靴を履く習慣がない方も多いでしょう。

そのため、自宅では無理に靴を履かせるというよりも、裸足や靴下で歩く場合も含めて、足元につまずく物がないか、床が滑りやすくないかなど、環境全体を確認することが重要です。

高齢者の室内履きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

【内部リンク】
「高齢者のスリッパは危険?転倒予防のための履物の選び方」


⑤ 一人で夜間トイレに行くことが安全なのか見直す

最後に考えてほしいのが、**「夜間に一人でトイレへ行くことが本当に安全なのか」**という点です。

日中は一人で歩けている方でも、夜間になると条件が変わります。

例えば、

  • 暗い
  • 眠気がある
  • 起き上がった直後である
  • 急いでトイレへ行こうとする
  • 履物をきちんと履けない
  • 車いすの操作や移乗に不安がある
  • 認知機能の低下などにより安全確認が難しい

といったことがあります。

そのため、

「昼間は一人で歩けるから夜も大丈夫」

と単純に判断するのではなく、夜間の実際の動作を考えて安全性を確認することが大切です。

必要に応じて、家族による見守りや介助を検討したり、手すりなどの福祉用具、ポータブルトイレなどを含めて、本人に合った方法を考えることもあります。


夜間トイレの転倒を防ぐチェックリスト

最後に、自宅の環境や動作を確認してみましょう。

ベッド周辺

□ ベッドから立ち上がったときにふらつかない
□ ベッド周囲に物が置かれていない
□ 夜間でも足元が確認できる
□ 照明のスイッチを安全に操作できる

トイレまでの通路

□ 廊下や部屋が暗くなっていない
□ 足元を照らす照明がある
□ 通路に物やコードがない
□ マットや敷物がずれない
□ 段差につまずく危険がない

車いすを使用している場合

□ 移乗前にブレーキをかけられる
□ 車いすが安定した状態で移乗できる
□ フットレストが移乗の邪魔になっていない
□ 一人で安全に移乗できる

履物

□ 履物を正しく履けている
□ かかとを踏んでいない
□ サイズが大きすぎない
□ 履物の中で足が動いていない


まとめ|夜間トイレの転倒は「歩行」だけを見ない

高齢者の夜間トイレの転倒を防ぐためには、トイレまで歩くことだけを考えてはいけません。

ベッドから起き上がる

照明をつける

履物を整える

歩く・車いすで移動する

必要であれば移乗する

トイレを利用する

という一連の動作を確認することが重要です。

私が勤務する施設では、夜間の転倒について、歩行中よりも車いすを自走される方の移乗時に転倒するケースが多いという印象があります。

また、履物をしっかり履けていないことが、夜間の移動やトイレでの転倒につながることもあります。

一方で、職員の介助中や見守り中の転倒はほとんど起こっていないことからも、本人が一人で動き始める場面を安全にすることが、夜間の転倒予防では重要だと考えています。

自宅では、施設のように職員が常に見守ることはできません。

だからこそ、

「一人で安全に動けるようにするには、何を変えればよいか?」

という視点で、照明・環境・履物・車いす・移乗動作を見直してみましょう。

夜間のトイレへ行くことを完全になくすことは難しいからこそ、転倒しにくい環境と動作を作ることが大切です。


【この記事の執筆者】

usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)

理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。

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