「最近、親の歩き方が不安定になってきた」
「家の中でつまずくことが増えた」
「高齢の家族が転倒しないように対策したい」
このように、高齢の家族の転倒を心配している方も多いのではないでしょうか。
高齢者の転倒は、住み慣れた自宅でも起こります。
そして、転倒は一時的なケガだけで終わらないことがあります。
内閣府の「令和4年版高齢社会白書」では、65歳以上の要介護者等が介護を必要とするようになった主な原因の一つとして「骨折・転倒」が挙げられており、その割合は13.0%でした。
これは「転倒した人の13%が要介護になる」という意味ではありません。要介護状態になった人に、その原因を尋ねたところ、13.0%が「骨折・転倒」と回答したという統計です。
また、公益社団法人日本理学療法士協会の「理学療法ハンドブック18 転倒予防」でも、転倒・骨折は主要な要介護要因の一つとして紹介されています。
高齢者の場合、転倒をきっかけに骨折すると、痛みや安静によって活動量が低下することがあります。
その結果、筋力や体力がさらに低下し、歩行能力の低下や生活範囲の縮小につながる可能性もあります。
だからこそ、転倒してから対応するのではなく、**「転倒する前にリスクを見つけて対策すること」**が大切です。
この記事では、理学療法士として高齢者のリハビリや介護現場に関わってきた経験をもとに、高齢者が家の中で転倒する主な原因と予防方法について紹介します。
高齢者の転倒は家の中でも起こる
「自宅は住み慣れた安全な場所」と思う方も多いでしょう。
しかし、高齢者にとっては、長年住み慣れた家の中でも転倒することがあります。
消費者庁が公表している高齢者の自宅内転倒事故に関する資料では、事故の発生場所として、
- 浴室・脱衣所
- 庭・駐車場
- ベッド・布団周辺
- 玄関・勝手口
- 階段
などが挙げられています。
また、転倒事故のきっかけとして、
- 滑る
- つまずく
- ぐらつく
- ベッドなどからの移動
- 物に引っ掛かる
といった状況があります。
このことからも、高齢者の転倒予防では、単純に「足の筋力を鍛える」だけではなく、本人の身体機能と生活環境、そして実際の動作を確認することが重要だと考えられます。
高齢者が家の中で転倒する7つの原因
1.筋力やバランス能力が低下している
高齢になると、加齢や活動量の低下などによって、少しずつ筋力やバランス能力が低下することがあります。
特に、
- 椅子から立ち上がる
- ベッドから起きる
- 方向転換をする
- 階段を昇り降りする
といった動作では、下肢の筋力やバランス能力が必要になります。
以前は問題なくできていた動作でも、身体機能の低下によってふらつきやすくなることがあります。
予防方法
転倒予防のためには、本人の身体能力に合わせて身体を動かす機会を確保することが大切です。
例えば、
- 椅子からの立ち上がり
- 安全な範囲での歩行
- 日常生活の中での活動量を確保する
などがあります。
ただし、運動をすれば必ず転倒を防げるわけではありません。
「歩くことが不安定なのに筋力トレーニングだけを続ける」といった方法では、実際の生活場面に必要な能力が十分に身につかない場合があります。
転倒予防では、本人がどのような場面で転倒しそうなのかを確認し、その目的に合った運動やリハビリを考えることが大切です。
関連記事:筋トレだけでは転倒予防にならない?目的に合ったリハビリとは
2.歩行能力が低下している
高齢者の転倒では、歩行能力の変化も重要なポイントです。
例えば、
- 歩く速度が遅くなった
- 歩幅が狭くなった
- 足が上がりにくい
- すり足になった
- 方向転換でふらつく
- 歩き始めに時間がかかる
といった変化がみられることがあります。
このような変化があると、今まで問題なく歩けていた場所でも、つまずいたりバランスを崩したりする可能性があります。
予防方法
まずは本人の歩き方を確認してみましょう。
「最近、歩くのが遅くなっていないか」
「足が上がりにくくなっていないか」
「方向転換でふらついていないか」
などを確認します。
必要に応じて、杖や歩行器などの歩行補助具を使用することで、安全に移動できる場合もあります。
ただし、歩行補助具は「使えば安全」というものではありません。
本人の身体能力や生活環境に合ったものを選び、正しい使い方を確認することが大切です。
関連記事:歩行補助具の選び方と練習方法
3.床や通路の小さな段差・障害物につまずく
高齢者の転倒では、床にある物だけでなく、小さな段差につまずくこともあります。
例えば、
- ふすまの敷居
- 畳とフローリングの境目
- カーペットの端
- 電気コード
- 床に置かれた荷物
- 小さな段差
などです。
若い人であれば簡単にまたげる程度の段差でも、高齢になると足が上がりにくくなったり、すり足になったりすることで、つまずくことがあります。
また、つまずいたときにバランスを立て直す力が低下していると、そのまま転倒につながる可能性があります。
裸足で生活していても小さな段差には注意
日本の家庭では、室内で靴を履かずに裸足で生活することも多くあります。
しかし、裸足で歩いているからといって、必ずしも転倒しないわけではありません。
実際に、ふすまの敷居など、わずかな段差に足を引っかけて転倒したケースもあります。
「靴が滑る」という視点だけでなく、足がしっかり上がっているか、小さな段差を安全にまたげているかという視点も重要です。
自宅の転倒予防では、大きな段差だけでなく、普段は気にしないような小さな段差も確認してみましょう。
4.履物が足に合っていない
履物も転倒予防を考えるうえで重要です。
例えば、
- スリッパ
- サイズが合わない靴
- 滑りやすい履物
- かかとを踏んだ状態での歩行
などは、歩行を不安定にする可能性があります。
介護現場でも、靴のかかとを踏んだまま歩いている方を見かけることがあります。
本人は「少しの距離だから大丈夫」と思っているかもしれません。
しかし、歩行中に靴が脱げそうになることで、歩き方が変わったり、バランスを崩したりする可能性があります。
予防方法
履物を選ぶときは、
- 足のサイズに合っている
- かかとが安定している
- 滑りにくい
- 脱げにくい
- 本人が安全に履ける
といった点を確認しましょう。
ただし、履物は「安全性」だけでなく、本人が実際に使い続けられることも重要です。
履きやすさや本人の生活スタイルも考えながら選ぶ必要があります。
5.浴室や脱衣所で滑る
浴室や脱衣所は、高齢者の転倒を考えるうえで注意が必要な場所です。
浴室では、
- 床が濡れている
- 石けんなどで滑りやすい
- 浴槽をまたぐ
- 立ち上がる
- 方向転換する
など、転倒につながる場面が多くあります。
脱衣所でも、衣服の着脱などで身体を動かしたり、片足に体重をかけたりする場面があります。
予防方法
必要に応じて、
- 滑りにくい環境をつくる
- 手すりを設置する
- 浴槽への出入り方法を見直す
- 浴室内の動作を確認する
- 衣服の着脱方法を見直す
などの対策を考えます。
特に、以前は問題なく入浴できていた人でも、身体機能が低下すると、同じ環境が危険になることがあります。
「今まで大丈夫だったから」ではなく、現在の身体能力に合わせて環境を見直すことが大切です。
6.ベッドや布団からの移動時にふらつく
高齢者の場合、ベッドや布団から起き上がった直後に転倒することがあります。
特に、
- 起き上がった直後
- 立ち上がった直後
- 夜間にトイレへ向かうとき
などは注意が必要です。
布団で生活している方の場合、床から身体を起こし、座位になり、立ち上がるという複数の動作が必要になることがあります。
本人にとっては毎日行っている動作でも、筋力やバランス能力が低下すると、少しずつ難しくなることがあります。
予防方法
例えば、
- ベッドや布団周辺を整理する
- 足元を明るくする
- センサーライトを使用する
- 立ち上がってから少し時間を置いて歩く
- トイレまでの動線を確認する
といった方法があります。
夜間のトイレ移動が多い方の場合は、本人の身体能力だけでなく、寝床からトイレまでの環境全体を確認することが重要です。
7.玄関の大きな段差やマットでバランスを崩す
玄関も、高齢者の転倒を考えるうえで注意したい場所です。
特に、築年数の経った住宅や昔ながらの日本家屋では、玄関の「上がりかまち」が高くなっていることがあります。
若い人にとっては問題なく昇り降りできる段差でも、足が上がりにくくなった高齢者にとっては、大きな負担になることがあります。
玄関では、
- 靴を脱ぐ
- 靴を履く
- 立ち上がる
- 段差を昇る
- 段差を降りる
といった複数の動作を行います。
特に、片足で立つ時間が長くなったり、身体を前後に動かしたりすることで、バランスを崩すことがあります。
玄関マットや床マットが転倒の原因になることも
玄関や室内に敷くマットは、汚れや水分を防いだり、インテリアとして部屋をおしゃれに見せたりする役割があります。
しかし、高齢者の転倒予防という視点では注意が必要です。
マットの端につまずいたり、マット自体が滑ったりすることで、転倒につながることがあります。
特に、
- 裏面が滑りやすい
- 床との間に段差ができている
- マットの端がめくれている
- 薄いマットがずれる
- 足を引っかけやすい
といった場合は注意が必要です。
「おしゃれだから」「玄関にはマットを置くものだから」と考えるのではなく、実際に高齢者が歩いたときに安全かどうかを確認することが大切です。
必要であれば、マットを置かないことも転倒予防の一つの方法です。
どうしても使用する場合は、滑りにくいものを選び、めくれやずれがないか定期的に確認しましょう。
転倒しやすい場所に共通する「立ったまま行う動作」
ここまで、玄関や脱衣所、浴室など、高齢者が転倒しやすい場所について紹介してきました。
私が高齢者の転倒を実際に確認してきた経験から考えると、これらの場所には一つの共通点があると感じています。
それは、**「立ったまま行う動作が多いこと」**です。
さらに細かく見ると、立ったまま行う動作の中には、一時的に片足で身体を支えながら姿勢を保つ必要がある動作が含まれています。
例えば、玄関で靴を履く場面を考えてみましょう。
立ったまま靴を履こうとすると、片足を上げるため、一時的に反対側の足だけで身体を支えることになります。
このときには、
- 片足で身体を支える力
- バランスを保つ能力
- 身体を安定させる体幹の力
- 足を上げる動作
- 靴を履くために身体を前にかがめる動作
など、複数の能力が必要になります。
高齢者の場合、両足で立っているときには問題がなくても、片足になった瞬間にバランスを崩すことがあります。
このような動作は玄関だけではありません。
例えば、
- 玄関で靴を脱ぎ履きする
- 浴室で浴槽をまたぐ
- ズボンや下着を立ったまま着脱する
- 布団やベッドから立ち上がる
- カーテンを開閉するために身体を伸ばす
- 物を取るために片側へ体重を移動する
など、日常生活の中には片足に体重をかけたり、身体の重心を移動させたりする動作が数多くあります。
特に玄関、脱衣所、浴室などは、こうした動作に加えて、
- 玄関の段差
- 高い上がりかまち
- 濡れた床
- 滑りやすい床
- マット
- 狭いスペース
などの環境要因が重なることがあります。
そのため、転倒予防では「この場所は危険」と考えるだけではなく、
「この場所で、どのような動作をしているのか」
を確認することが大切です。
特に、片足で身体を支える動作や、身体の重心を大きく移動させる動作が含まれていないかを確認してみましょう。
両足で安定して立てる人でも、片足になるとバランスを崩すことがあります。
そのため、本人が「立っていられるか」だけでなく、**「立った状態で何をするのか」「片足になったときに姿勢を保てるのか」**という視点から転倒リスクを考えることが重要です。
実際の転倒事例から考える「見落としやすい転倒リスク」
ここまで、高齢者の転倒につながりやすい原因を紹介しました。
しかし、介護現場で実際に転倒した経緯を確認すると、転倒は必ずしも「危険な場所」で起きているとは限りません。
普段の生活の中にある、何気ない動作が転倒のきっかけになることがあります。
ここでは、実際の介護現場で転倒した状況を確認した経験から、見落としやすい転倒リスクについて紹介します。
※以下は実際の転倒状況をもとに、個人が特定されないよう一般化して紹介しています。
カーテンを開閉するときにふらついて転倒
カーテンを開けたり閉めたりするために立ち上がり、カーテンを操作しているときにふらついて転倒したケースがありました。
カーテンの開閉自体は、特別難しい動作ではありません。
しかし、立った状態で手を伸ばしたり、身体をひねったりすることで、バランスを崩すことがあります。
特に、立位バランスが低下している高齢者では、普段の歩行は問題なくても、こうした「立ったまま手を伸ばす」「身体をひねる」といった動作で転倒する可能性があります。
布団から立ち上がるときにふらついて転倒
布団で生活している方が、布団から立ち上がる際にバランスを崩して転倒したケースもありました。
布団からの立ち上がりでは、床から身体を起こし、座位になり、立ち上がるという複数の動作が必要になります。
本人にとっては毎日行っている動作でも、筋力やバランス能力が低下すると、少しずつ難しくなることがあります。
布団での生活が本人の身体能力に合っているのか、立ち上がるときにつかまれる場所があるのかなどを確認することも、転倒予防につながります。
暗い中で照明を操作するときにふらついて転倒
夜間や暗い部屋で、照明を操作しようとしているときにふらついて転倒したケースもありました。
暗い場所では、足元や周囲の状況が確認しにくくなります。
さらに、照明のスイッチを探したり操作したりするために身体を動かすことで、バランスを崩す可能性があります。
このような場合は、
「暗い環境」+「立った状態での操作」+「バランス能力の低下」
という複数の要因が重なっていた可能性があります。
足元を照らす照明を設置したり、ベッドから手の届く位置に照明のスイッチを設置したりするなど、本人の生活に合わせた環境調整が必要になる場合があります。
ふすまのわずかな段差に足を引っかけて転倒
日本の家庭では、畳やふすまなどを使った住環境も多く、室内で靴を履かずに裸足で生活することもあります。
しかし、裸足で生活していても転倒することがあります。
実際に、ふすまの敷居などのわずかな段差に足を引っかけて転倒したケースもありました。
若い人であれば簡単にまたげるような小さな段差でも、高齢になると足が上がりにくくなったり、すり足になったりすることで、つまずくことがあります。
また、つまずいたときにバランスを立て直す力が低下していると、そのまま転倒につながる可能性があります。
このような事例からも、転倒予防では大きな段差だけでなく、**「普段は気にしないような小さな段差」**にも目を向けることが大切だと分かります。
転倒したときは「場所」だけでなく「経緯」を確認する
これらの事例から分かることは、転倒予防では「危険な場所を探す」だけでは不十分だということです。
大切なのは、
「その人が普段どのように生活しているのか」
を知ることです。
カーテンを開ける。
布団から起きる。
照明をつける。
ふすまの敷居をまたぐ。
玄関で靴を履く。
浴槽をまたぐ。
どれも日常生活では当たり前の動作です。
しかし、身体機能が低下した高齢者にとっては、その当たり前の動作が転倒のきっかけになることがあります。
転倒が起きたときは、「どこで転んだか」だけでなく、
- 何をしようとしていたのか
- 転倒する直前にどのような動作をしていたのか
- 立っていたのか、歩いていたのか
- 片足に体重をかけていなかったか
- 身体をひねったり、手を伸ばしたりしていなかったか
- 周囲は明るかったのか
- どのような履物を履いていたのか
- 手すりや家具などにつかまっていたのか
- いつもと違う行動をしていなかったか
など、転倒するまでの経緯を確認することが重要です。
転倒した場所だけを見ても、原因が分からないことがあります。
「なぜその場所で転倒したのか」
「その直前に何をしていたのか」
を考えることで、次の転倒を防ぐための具体的な対策につながります。
転倒予防は「人・環境・動作」の3つから考える
高齢者の転倒を予防するためには、転倒の原因を一つだけに絞らないことが大切です。
私は、転倒予防を考えるときには、
① 人の要因
- 筋力低下
- バランス能力低下
- 歩行能力低下
- 足が上がりにくい
- 片足で姿勢を保つ能力の低下
② 環境の要因
- 段差
- 敷居
- 高い上がりかまち
- マット
- 濡れた床
- 暗さ
- 狭いスペース
③ 動作の要因
- 立ったまま靴を履く
- カーテンを開閉する
- 布団から立ち上がる
- 照明を操作する
- 浴槽をまたぐ
- 立ったまま衣服を着脱する
- 手を伸ばす
- 身体をひねる
この3つの視点から考えることが重要だと考えています。
例えば、筋力が低下している人が、濡れた浴室で片足になれば、転倒リスクは高くなる可能性があります。
また、歩行能力に問題がなくても、暗い部屋で立ったまま照明を操作しているときにバランスを崩すこともあります。
つまり、転倒は**「人」だけでも「環境」だけでもなく、「人・環境・動作」が重なったときに起こることがある**のです。
だからこそ、転倒予防では「危険な場所」を探すだけでなく、
「その人が、その場所で、何をしているのか」
まで確認することが大切です。
関連記事:特養で実践している転倒予防|環境整備と日常生活での取り組み
自宅の転倒リスクをチェックしてみましょう
最後に、自宅の環境や本人の状態を確認してみましょう。
身体・歩行
□ 最近、歩く速度が遅くなった
□ 足が上がりにくくなった
□ 歩幅が狭くなった
□ 方向転換でふらつく
□ 椅子やベッドからの立ち上がりに時間がかかる
□ 片足で立つとふらつく
住環境
□ 床に物が置いてある
□ 電気コードが通路にある
□ 敷物がずれることがある
□ ふすまの敷居など小さな段差がある
□ 夜間に暗い場所がある
□ 玄関の上がりかまちが高い
□ 玄関や廊下に段差がある
□ マットが滑ったり、めくれたりする
履物
□ スリッパを履いている
□ かかとを踏んで歩くことがある
□ サイズが合っていない
□ 滑りやすい履物を使用している
生活動作
□ カーテンの開閉時に身体がふらつく
□ 布団からの立ち上がりが不安定
□ 照明を操作するときにふらつく
□ 夜間にトイレへ行くことが増えた
□ 急いで移動することがある
□ 家具につかまって歩くことがある
□ 立ったまま衣服を着脱している
□ 浴槽をまたぐときに不安定になる
□ 最近、転倒やつまずきが増えた
1つでも気になる項目があれば、転倒リスクを見直すきっかけになります。
まとめ|転倒予防は「危険な場所」だけでなく「その人の動作」を見る
高齢者の転倒は、身体機能だけが原因ではありません。
筋力やバランス能力の低下、歩行能力の変化、段差やマットなどの住環境、履物、浴室の滑りやすさなど、さまざまな要因が関係しています。
また、内閣府の高齢社会白書では、介護が必要となった主な原因の一つとして「骨折・転倒」が挙げられています。
すべての転倒が要介護状態につながるわけではありませんが、高齢者の転倒・骨折は、その後の生活や介護の必要性に関係する重要な問題です。
だからこそ、転倒してから対策するのではなく、転倒する前にリスクを見つけることが大切です。
そして、転倒予防では「危険な場所」を探すだけでなく、**「その人が、その場所で、どのような動作をしているのか」**を考えることが重要です。
玄関で靴を履く。
浴室で浴槽をまたぐ。
脱衣所で衣服を着替える。
カーテンを開ける。
布団から起きる。
暗い中で照明を操作する。
ふすまの敷居をまたぐ。
このような何気ない日常動作の中には、片足で身体を支えたり、重心を大きく移動させたり、身体をひねったり、手を伸ばしたりする動作が含まれています。
両足で安定して立てる人でも、こうした動作を行った瞬間にバランスを崩すことがあります。
転倒予防を考えるときには、
「人」×「環境」×「動作」
この3つの視点から、その人の生活を見直してみましょう。
「最近、歩き方が変わった」
「家の中でつまずくことが増えた」
「片足になるとふらつく」
「家具につかまって歩くようになった」
「以前より立ち上がりが不安定になった」
このような変化があれば、身体機能だけでなく、本人の生活環境や日常動作も一度見直してみることをおすすめします。
転倒予防は、運動だけでなく、その人の身体能力と生活環境、そして実際の生活動作を合わせて考えることが大切です。
家の中で安全に生活を続けるためにも、「転倒してから」ではなく「転倒する前」からできる対策を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 内閣府「令和4年版高齢社会白書」
- 公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック18 転倒予防」
- 消費者庁「10月10日は『転倒予防の日』」
- 消費者庁「住環境における高齢者の事故について」
【この記事の執筆者】
usagi.inco(理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級)
理学療法士として18年以上、高齢者リハビリテーションに従事。現在は特別養護老人ホームで勤務し、介護職員への介助技術指導、転倒予防、褥瘡予防、リスクマネジメント活動などに携わっています。


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